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医学の豆知識

48.多剤耐性アシネトバクター感染症 2010年11月1日掲載

 2010年9月に都内の大学病院にて多剤耐性のアシネトバクターという細菌による集団院内感染例の報告がテレビや新聞などを通じてありました。この細菌による院内感染例は、2008年にも九州の病院においてすでに報告されており、今回の都内での例が全く新しいものではありません。このような院内感染を起こす多剤耐性アシネトバクターについてご説明します。

(菌の生態)アシネトバクターという細菌は、土壌や河川水などの自然環境中、住環境中に普通に生息する環境菌です。湿潤な環境を好みますが、乾燥にも強く3週間程度は生きていられます。この細菌は病院内にも常在していますが、数種類の抗菌剤に抵抗する多剤耐性菌は極めて稀と言われています。

(病原性)健常な人にとって無害ですので一般の診療所では殆ど問題にならない細菌です。アシネトバクターには多数の種類がありますが、その中でAcinetobacter baumannii(アシネトバクターバウマニ)がヒトへの感染を起こす菌として知られています。病院に入院中の末期癌、糖尿病など免疫力の低下した患者さんにおいて、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、敗血症、尿路感染、手術部位感染を起こし、重症化することがあります。 (感染経路)殆どは接触感染で、手洗いが不十分な医療関係者、消毒が不十分な医療器具を介して伝搬します。

(多剤耐性アシネトバクター)数多くの抗菌薬の中でもカルバペネム系、フルオロキノロン系、アミノグリコシド系の薬剤に全て耐性を示すアシネトバクターの菌株を示します。

(治療)単にアシネトバクターを患者さんから検出したからといって、即治療の対象とはなりません。この菌は環境中にどこでもいる菌ですので、患者さんの検体に偶然混入している場合や、菌は体に付着しているが悪さをしていない保菌の状態なども考えられます。本当に多剤耐性のアシネトバクターを検出した場合、使用できる抗菌剤は極めて限られているので、抗菌剤の使用にあたって院内感染の専門知識のある医師による厳重な指導が必要です。

(感染予防)病院に出入りする場合は、手洗いは必ず必要です。特に、病院内において多剤耐性菌に感染した患者さんに接触した後はなおさらきちんと行って下さい。

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