医学の豆知識
32.鞭打ち損傷 2008年3月19日掲載
自動車事故の追突などの際に、直接頭や首には力は加わらないものの、体に加わった力の反動で、通常の範囲を超した前後の首の運動が起こり生じた損傷を鞭打ち損傷といいます。
明らかな脱臼や骨折を伴う場合は鞭打ち損傷から除外します。鞭打ちという病名は被害者に対し精神的に衝撃を与えやすいことから、外傷性頚部症候群や頚椎捻挫という病名を使う傾向にあります。
その実態は、頭から首にかけての軟部支持組織(筋、靭帯、椎間板、関節包など)の損傷や、頚神経根・末梢神経・脊髄・自律神経・内耳の神経の機能障害、および脳震盪が含まれます。実際はそれらが幾つか重なり合い、また時期を変えて、被害者の仕事内容・賠償・休業等の諸条件が加わり、多彩な経過をとることになります。その症状としては、項頚部(うなじや首)・肩・後頭部などの疼痛が一般的で、凝りを伴うこともあります。怪我の程度と受傷した場所にもよりますが、頚が痛くて動かせない(運動制限)、動かすと痛む(運動時痛)、押さえての痛み(圧痛)などいろいろです。
一般に、受傷直後の症状は軽度で、翌日から1〜2日後が最も強いことが多く、1週間を過ぎるころより徐々に症状も軽くなります。そのため早期の治療は無理に動かさず安静を中心に行い、痛みが落ち着き頚を動かせるようになり、押さえても痛くなくなり、伸びをしても痛みがなくなった頃から、安静よりも筋のストレッチを中心としたリラクゼーション訓練に移行します。またこわばりが解消したら、筋力強化体操へと進むことができれば治療としては理想的です。
一方、補償が絡む場合は心理的にも不安定になりやすく、周囲の雑音に惑わされて重篤感を持ち、いたずらに長期安静を続ける傾向にあり、その結果、項、肩に筋力低下を来たし、肩こりや筋収縮性頭痛を起こし、慢性化することがあるのでご用心下さい。
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