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医学の豆知識

29.大腸がん 2007年7月30日掲載

Q1:大腸はどんな働きをするところ?

私たちが食べた食物は、胃や小腸で消化され栄養素が吸収された後大腸に入ってきます。 大腸は長さが約2mあり、結腸と直腸からなっています。結腸は小腸に近い方から、盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸の順で、直腸→肛門へと移行します。

大腸に入ってきた食物のかすは最初黄色の水様便ですが、これは約10時間かけて直腸に移動していきます。この間に水分が吸収されて排便しやすい固形便が形成されます。この様に大腸は水分を吸収して大便を作る場所です。できた固形便は直腸に溜まって直腸が便でいっぱいになると便意が大脳に伝えられ排便の指令が出て、肛門括約筋が緩んで排便がおきます。このようにまとめて排便することにより、忙しい現代人は1日3食食べますが、排便は通常1回だけで済ませています。

この大腸の機能に問題がおき、水分の吸収が悪くなると下痢をしたり、逆に便が停滞したりすると便秘になります。

Q2:大腸がんとはどんな病気?

大腸がんは大腸の内面の粘膜というところにできる悪性の腫瘍です。がんは近年、日本人の死因の第1位を占め、大腸がんは亡くなる人が肺がん・胃がんに次いで多いがんです。特に2005年の統計では患者数は約40000人で、胃がんを抜いて第1位になっています。

Q3:年令差や男女差はありますか?

年令的には50歳代頃から大腸がんになる人が増加し高齢になる程罹患率(病気になる確率)は高くなります。 大腸がんになった人の約半数の人が毎年亡くなっています。

また男性と女性では、罹患率・死亡率とも男性の方が約2倍高い傾向にあります。

Q4:どんな人が大腸がんになりやすの?(大腸がんの危険因子は?)

肥満は大腸がんの危険因子とされています。

また食習慣では、飲酒やハム・ベーコン・ソーセージ等の加工肉をたくさん食べると大腸がんになりやすいと言われています。 さらに喫煙習慣は、日本人では大腸がん特に直腸がんになるリスクを高めるというデータがあります。

また家族性大腸ポリポーシスや潰瘍性大腸炎の患者さんはがんになりやすいようです。

Q5:大腸がんの症状は何ですか?

初期の大腸がんには特徴的な症状はなく無症状です。

しかし進行すると血便や便通異常がみられます。特に直腸がんやS状結腸がん等の肛門に近い部位の大腸がんでは血便や下痢・便秘の繰り返し、残便感、腹痛等の症状がみられます。また直腸がんでは便が細くなったり、血便が出ても痔と勘違いしてしまうこともあります。一方、盲腸や上行結腸等の肛門から離れた右側大腸のがんでは、貧血や腹痛を伴うしこり等で発症することがあります。

さらに進行すると、嘔吐や腹痛を伴う腹部膨満等の腸閉塞症状を示す場合もあり、救急処置が必要となる場合もあります。

Q6:大腸がんを早く発見するには?

無症状な時期に早期に大腸がんを発見して治療すれば、殆どが治ります。 従って、まず大腸がん検診を進んで受けましょう。通常大腸がん検診は検便により、便の中の潜血反応を調べることで受けられる苦痛の無い簡単な検査法です。我が国で行われている検診は、便の免疫学的潜血反応といって食事制限を必要としない方法です。

潜血反応が陽性に出た場合、精密検査が必要となります。精密検査には通常、大腸の内視鏡検査を行います。大腸の内視鏡検査を行うためには、下剤を飲んで大腸の中の便を全部出して空っぽにしておく必要があります。大腸の中に便が残っていると、ポリープや小さな病変が便の下に隠れていて発見できなかったり、便が邪魔をして検査に時間がかかったりして不都合なことがあります。最近よく用いられる下剤は腸管洗浄剤といって腸を洗い流すお薬です。他の下剤と違って、体の水分が失われて脱水症になったり心臓や腎臓に負担のかからない下剤です。しかし、大腸を洗い流して綺麗にするためには2リットル位 服用する必要があるのが難点です。味はスポーツドリンクのような感じです。

他には注腸造影検査があります。前日より食事制限を行いやはり下剤を服用し腸を空にします。この後肛門からバリウムと空気を注入しエックス線写真を撮ります。この検査では、がんの正確な位置や大きさ、大腸の狭窄等が診断できます。

Q7:大腸がんの治療はどうしますか?

大腸がんの治療法には、(1)大腸内視鏡治療、(2)外科的手術療法、(3)放射線療法、(4)化学療法等があります。

(1)大腸内視鏡治療

転移の無いごく早期の大腸がんや腫瘍性のポリープ等は、内視鏡で切除することができます。ポリペクトミー(ポリープ切除)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法です。小さい病変の場合は、外来治療も可能ですが、大きな病変の場合はごく短期間(数日間)の入院が必要です。

(2)外科的手術療法

内視鏡的に切除が不可能な場合や、早期がんでもリンパ節転移の可能性のある場合、進行がんの場合等は外科的手術療法が必要となります。手術療法には、@腹腔鏡手術、A開腹手術、B局所切除術等があります。

@腹腔鏡手術 腹腔鏡手術はがんが盲腸や上行結腸、S状結腸、直腸の上部に存在する場合に良い適応となります。腹腔鏡手術は炭酸ガスで腹部を膨らませ腹腔鏡を挿入し、テレビモニターで腹部の内部を見ながら、ごく小さな孔から手術器具を挿入して腸を切除します。器具を挿入する孔は5〜10mm位の大きさで、遊離した腸を引っ張り出す時、数cm腹部を切開します。開腹手術と同様の手術が小さな創でできるため、術後の痛みが少なく回復が早いため1週間位で退院できます。ただし、腹腔鏡手術には特殊な器具と特別な訓練や技術が必要なため、できる施設や外科医は限られています。また多くの手術機材が必要で手術時間も長いため、経済効率が悪いのが難点です。

A開腹手術 開腹手術では腹腔鏡では困難な例に対しても腸とリンパ節の切除(リンパ節郭清)を行い、残った腸を縫い合わせ再び便が通るようにできます。
結腸がんでは術後の機能障害は殆ど起こりませんが、直腸がんでは病状によっては、排便・排尿・性機能等に機能障害が残る場合があります。
直腸は骨盤内の一番深い所にあり、周囲に膀胱・尿管、男性では前立腺、女性では卵巣・子宮・膣等があり、さらに排便や排尿・性機能に関係する神経(自律神経)も存在するため、がんの進行度によってはこれ等を合併切除したり、神経を犠牲にしなければならない場合があります。この結果、術後に下痢を繰り返したり、男性においては勃起や射精等が障害されることがあります。
また、直腸がんでも肛門にごく近い部分にがんが存在する場合は肛門を含めて切除しなければならないので、人工肛門(ストーマ)になることがあります。
人工肛門の管理や手当の方法や道具はかなり進歩していますので、上手に排便管理を行えば、便の出る回数や時間をある程度コントロールすることもでき、入浴や外出・旅行等も可能です。人工肛門を持つ患者さんの会もあり、人工肛門の管理等のストーマ教育も充実し専門家もいますのでお悩みの方は主治医にご相談してみると良いでしょう。

B局所切除術 内視鏡的には切除が不可能な直腸下部にできた大きな腺腫や早期がんの場合に、適応となる手術方法です。
肛門を広げて肛門から切除する方法と、仙骨近くのお尻の皮膚を切開して病変を切除する方法です。
病状によっては術後に放射線療法や化学療法を併用する場合もあります。

(3)放射線療法

手術療法の補助的な治療法として化学療法等と併用して行う補助放射線療法と、切除が不可能な場合にがんからの出血や痛みを緩和する目的で行う緩和的放射線療法があります。

補助放射線療法は、術後の骨盤内での再発を予防するために行う場合と、がんが進行して大きな場合に腫瘍サイズを縮小させて手術をしやすくしたり、肛門を温存 する目的で行う場合があります。

緩和的放射線療法は、がんが骨盤内に浸潤して痛みや出血がある場合や骨転移の痛み、脳転移による神経症状などの緩和の目的で行われます。

放射線療法の副作用には、治療中早期に現れるものと、治療終了後数ヶ月から数年して現れる晩期の副作用があります。

早期の副作用としては、全身倦怠(だるい、疲れやすい)、食欲不振、吐き気や嘔吐、下痢、頻尿、排尿時痛、皮膚炎(発赤、ただれ)等の自覚症状と白血球減少 があります。副作用の程度には個人差があり、軽い人と強い人がいます。症状の強い人には症状を和らげる治療を行います。  晩期の副作用には腸の炎症や出血、癒着、膀胱炎等があり、対症療法を行います。

(4)化学療法(抗がん剤療法)

手術後の再発予防を目的として補助化学療法を行う場合と、手術療法が不可能な 進行がんやがんの再発に対して延命やQOL(生活の質)を改善する目的で行う場合があります。  化学療法は内服で行う場合と注射で行う場合があります。入院を必要とする場合と外来通院でできる場合があります。最近は副作用の少ない抗がん剤が開発され、日常生活を送りながらできるものもあります。

副作用の主なものには、食欲不振、吐き気や嘔吐、下痢、口内炎、全身倦怠(だるい、疲れやすい)、脱毛、手指や爪の色素沈着(黒くなる)、知覚過敏(冷たいものを触ったり飲んだりする時の違和感)等の自覚症状の他に、白血球減少や血小板減少等があります。

副作用に対しては主に対症療法を行います。ステロイド剤や吐き気を抑える薬を投与したり、白血球の増加を促す薬を投与したりしますが、副作用が強い場合は薬の量を減らしたり、投与を一時的にやめて休薬したりすることもあります。

Q8:大腸がんは予防できますか?

大腸がんを確実に予防することはできませんが、予防効果のあるものがいくつか考えられています。

まず、運動することにより大腸がん特に結腸癌になる確率が減少します。また、野菜や果物の摂取も大腸がんになる確立を減らす可能性があると言われています。

やはり大腸がんの危険因子である肥満の解消、過度の飲酒や喫煙習慣の改善、加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコン)の食べすぎをしないこと等も合わせて行う必要があります。特にタバコには約60種類の発がん物質が含まれていると言われ、同時に飲酒をすることによって発がん物質が溶けて吸収されやすくなると言われていますので、ご注意下さい。

最後に

大腸がんは早期発見早期治療にて確実に治るがんです。積極的に、大腸がん検診を受けると伴に、生活・食習慣の改善を図り予防に努め健康な生活を送りましょう。

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