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医学の豆知識

15.色覚異常(色盲・色弱)  2003年2月12日掲載

人の眼には、赤・緑・青をそれぞれ感じる神経細胞があります。そこから得た情報が脳に送られ、合わされて色を認識します。色覚異常は、色を感じる細胞に異常がある状態です。どの色を分担する細胞が弱いかで色覚異常のタイプが違います。

A 遺伝

i ) 先天赤緑異常
X染色体劣性遺伝という遺伝形式をとります。難しい言葉ですが、男子に多く女子には少ない先天異常ということです。しかし、女子の場合、遺伝子は持っていても色覚異常を表さない「保因者」の人が多くいます。色覚異常者は男子の5%、女子の0 .2%、保因者は女子の10%と言われています。両親の組み合わせで、子供への影響は以下のようになります。

  1. 色覚異常の男性+色覚正常の女性
    男児は正常、女児は保因者
  2. 色覚異常の男性+保因者の女性
    男児の 1/2 は正常、1/2 は色覚異常、女児の 1/2 は保因者、1/2 は色覚異常
  3. 色覚正常の男性+保因者の女性
    男児の 1/2 は正常、1/2 は色覚異常、女児の 1/2 は正常、1/2 は保因者
  4. 色覚正常の男性+色覚異常の女性
    男児は色覚異常、女児は保因者

赤を感じる細胞系の異常は第1異常、同じく緑は第2異常と分類されます。色覚異常は、ほとんどが先天赤緑異常です。

ii ) 先天青黄異常
先天赤緑異常がありふれているのと対照的に、非常に稀で、 0.002〜0.007%。性別に関係のない遺伝をします。青を感じる細胞系の異常によります。*以下、ほとんどをしめる先天赤緑異常についての解説をします。

B 見え方について

色覚異常者は、もちろん世の中が白黒テレビを見るように見えているわけではなく、異常の程度に応じた色の世界をもっています。色覚正常者と同じ判断が困難です。色覚異常の程度が強いほど色誤認(間違え)することが多く、色盲(強度の異常)の方と色弱の方では、色盲の方の方が間違える頻度は、多くなります。もちろん、いつも誤認するわけではなく、多くの条件に左右されます。

  1. 見るものが小さくて薄い色の時、色しか識別の特徴がない場合(対象の条件)
  2. 照明が暗い場合や短時間で判断しなければならないとき(環境の条件)
  3. 先入観があったり、惰性や過労などで注意力が欠如しているとき(色覚異常者自身の条件)

このような条件の下では誤認の頻度が多くなります。

以下に、強度色覚異常の方が、実際どのような色の誤認があるか、具体的に示します。

  1. 赤と緑・・緑の中にちらほら見える赤い紅葉や、赤い花が認識できない。ポインセチアの赤葉と緑葉、熟れたトマトとまだ緑のトマトの区別ができない。
  2. オレンジと黄緑・・コインロッカーなどに使われている小さな発光ダイオードが識別できない。
  3. 緑と茶・・木の幹と葉を区別して描けなかった。
  4. 青と紫・・色見本の差が分からず、誤った色の印刷物を作成してしまった。
  5. ピンクと白、灰色・・桜の花は白にしか見えない。淡いピンクの真珠を白と区別できない。
  6. 緑と灰色、黒・・黒板の緑チョークが読めない。小学生のとき、道路を塗るのに緑を使った。
  7. 赤と黒・・ボールペンの赤と黒、カレンダーの祝日と平日、時刻表の特急と鈍行の区別がむずかしい。動脈血と静脈血の区別が困難である。
  8. ピンクと青・・ピンクの白粉花(おしろいばな)を青だと思っていた。

上記のような混同があるとしても、先に述べましたように、”対象の条件”、”環境の条件”により見分けやすさに違いがあります。たとえば、雨の日や逆光で信号の識別に自信がなくなるが、信号の配列で判断するという方もいます。種々の条件を改善、調整することで色の認識を誤らないよう配慮をすることも大切です。たとえば、眼科の学会では、発表用スライドに使用色の規定があり、使用色の数は最小限にとどめる、黒・青・白・黄を基本とする、赤と緑の同時使用はさけるとされています。なにげなく眼にしている誘導標識の中には、矢印に白い縁取りをするなど、工夫されているものもあります。

C 進学・就職・結婚など

大学への進学に関しては 1994 年進学用調査書の色覚欄が廃止され、国立大学のすべての学部の入学基準から色覚異常の項目が削除されました。多くの公立・私立大学がこれに続いています。もちろん、理工系・医薬系にも制限がありません。自動車の運転免許の取得も可能です。就職に関しても、近年、法的規制が見直され、色覚異常に対する社会的制限は非常に緩和されました。しかし、航空機乗組員・甲種航海士・動力車操縦者・警察官など弱い色覚異常でも制限される職業もあり、他にも決められた色の識別ができることや強い色覚異常がないことが条件にあげられている職業もあります。規制はなくなり、就職可能な職業でも、実際仕事をしていく中で、色の誤認をしてしまい、仕事に支障をきたした場合、色覚異常故の支障というより個人の不注意として処理され、職場における個人の評価損になることも考慮しなければなりません。職業選択上で色覚異常者にまず必要なことは、自分の色覚異常のタイプ・強度をしっかり自覚し、そして選びたい職業での具体的な職場の作業における色弁別作業を知ることです。しかし、多くは自分の異常を自覚し、色を間違えそうなときは正常者に聞ける勇気と環境があれば、ほとんど支障がないといえます。現在の規定は変更される可能性もあり、希望の学校・職業についてはそれぞれ確認をする事が必要と思われます。

さて、色覚異常者や保因者にとって、結婚についての悩みは避けられないものでしょう。相手の人柄を重視すれば色覚異常は重大な問題にはならないでしょう。しかし、遺伝する異常ということを考えれば、親をはじめ周囲の者が「わが血筋にはいれたくない」と思うことは人間の本能のようなものかもしれません。どんな人もいろいろな能力と、いろいろな弱点・短所をもっています。色覚異常は多少不都合が生じることはあっても、人生を脅かすものではなく、他の能力には何ら問題はありません。色覚異常を嫌う”風習”があるとすれば、それは無知・無理解によると思われます。

D 治療

先天赤緑異常に対して現在の医学では治療の手段はありません。その理由は、この原因が網膜の視細胞レベルでの異常だからです。治療と称して行われている方法は、検査への慣れ=色覚異常の改善と判断しているのではないでしょうか。色覚補正レンズも出回っているようですが、ご自身も色弱である眼科医師の使用経験によると、 100-Hue test(色を似ている順に100 個並べる検査)で総偏差点では悪化した。「最大の驚きは紅葉が美しく見えたことであった。しかし、緑は暗く、青空は紫に、白い雲はピンクになる。残念ながら、人工的に修飾された赤の美しさにすぎなかった。正常者と同等の色覚が得られるという表現は明らかに誤りである」と感想を述べられています。

E 分類

色々な解説においてはじめにくるべき項目ですが、いろいろな分類・呼称があり、分かりにくい部分もありますので最後にまとめます。

1.単純分類(非科学的)
色盲
色弱

2.分類的(非科学的)
赤緑色盲
赤色盲
赤緑色弱
赤色弱
緑色盲
緑色弱

3.石原表
赤緑色盲第一型
赤緑色弱第一型
第二型第二型

4.医学用語
2色型色覚第1色盲
常3色型色覚第1 色弱
第2色盲
第2色弱

5.物理学・心理学での分類
2色型色覚
2色型第1異常
常3色型色覚
3色型第1異常
2色型第2異常
3色型第2異常

※色盲という言葉を使わずに分類しようという試みもされています。

色覚異常者が不必要な悩みを持たずに生活できる世の中になっていかなければいけないと思います。そのためには幼いころからの教育・生活の中で、色覚異常者自身には自身の色の感じ方の特性を十分理解させ、コンプレックスをもたせない配慮、正常者に対しては偏見を持たせない配慮が必要ではないのでしょうか。

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